陸軍技術本部伊良湖試験場(その1)
ここは愛知県渥美郡渥美町中山。渥美半島の最先端部分です。この辺一帯は明治の頃から大砲の試験場だったそうです。大砲はこの半島の先にある伊勢湾に向かって発射されていました。戦時中に中島飛行機で戦闘機の1/1図面のトレースしていたという牧野さんの話によると時々渥美半島の西にある知多半島から水柱を見ることが出来たそうです。
この建物は通称「六階建て」と呼ばれています。気象塔として風速などを計測していたそうです。この遺構の存在を新聞で知ったのをきっかけに私の遺構探訪が始まりました。
六階建ての各階は一部屋ずつになっていています。一階は農機具などの物置になっていました。2階以上は何も置いてありません。写真は一階の壁にあった落書きです。落書きと言ってもかなり凝ったもので中央の青い柱の左側は芸者風、右側はショートパンツのアメリカ人女性のようです。近所の人の話だと愛知県岡崎市辺りの画家が進駐軍に頼まれて書いたらしい、と言うことでした。これが千年位経ると高松塚古墳の壁画のように国宝になったりするのかも知れません。鉄筋コンクリートがそれまで保つかどうか分かりませんが。
六階建ての向かい側に観測所事務所があります。ここの一階も農機具置き場になっています。写真に写っているのはこの付近の遺構を案内してくれた近所の子供達です。
この様なコンクリート製の建物がこの付近に2棟あります。2棟とも何か細長い窓が付いています。この窓から何を観測したのでしょうか。砲弾の破裂による飛来物の侵入を防ぐためあんなに細いのでしょう。
これは上の写真の建物を反対側から見た写真です。T字の煙突や扉がとりつけられています。電気も来ている形跡があります。再利用しているようです。
道をへだててもう1棟あります。これも物置として再利用されているようです。建物の左側に六階建てが見えています。こちらの遮蔽窓は前述のものよりも大袈裟になっています。建設年代が違うのでしょうか。
上の2棟のすぐ近くにあるコンクリートの塊。試験場関連の遺構だと嬉しいのですが、正体は不明です。
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参考文献: 戦時下・愛知の諸記録95 発行者 あいち・平和のための戦争展実行委員会
戦時下・愛知の諸記録96 発行者 あいち・平和のための戦争展実行委員会
愛知の戦争遺跡ガイド 改訂版 発行者 あいち・平和のための戦争展実行委員会
制作 1999年7月20日